図を作る前に、まず情報をほどく
図解を作ろうとすると、最初にレイアウトや見た目を考えたくなります。箱を並べるのか、矢印でつなぐのか、表にするのか。けれど、うまく伝わらない図解の多くは、デザイン以前に情報が整理されていません。伝えたいことが複数混ざったまま、なんとなく図に押し込まれている状態です。
BtoB資料では、伝えたい情報が多くなりがちです。機能、導入効果、課題、業務の流れ、費用対効果、他社との違い。どれも大事に見えますが、1つの図解にすべて入れると、読み手はどこから見ればよいか分からなくなります。図解の前に必要なのは、情報を増やすことではなく、役割ごとに分けることです。
実務では、ここを飛ばしたままデザインに入ると、あとから「この箱はいらない」「この矢印は何を意味しているのか」「結局どこを見ればよいのか」という修正が増えます。図解の出来は、作り始める前の整理でかなり決まります。
最初に決めるのは読者
最初に見るべきなのは、誰に向けた図解なのかです。営業担当が商談で使うのか、マーケティング担当がホワイトペーパーに入れるのか、導入を検討する現場担当者が読むのか。読者が変わると、同じ情報でも見せ方は変わります。
たとえば、現場担当者に向けるなら、導入後の業務の変化や作業負担が気になります。上長に向けるなら、判断材料や比較軸が重要になります。情報システム部門に向けるなら、システム構成やデータ連携の流れが必要になるかもしれません。誰が読むのかを決めないまま図を作ると、全員向けのようで誰にも刺さらない図解になりやすいです。
結論を先に置く
次に決めるのは、その図解で何を分かってほしいかです。サービスの仕組みを理解してほしいのか、導入前後の違いを見てほしいのか、選定基準を比較してほしいのか。ここが曖昧だと、図解の中に入れる情報も曖昧になります。
図解の結論は、見出しに近いものです。「導入後は手作業が3工程減る」「3つの部門が同じデータを見られる」「Aプランは小規模導入向け、Bプランは全社展開向け」のように、読み手が受け取るべき意味を先に決めます。図解は、その結論を支える材料として組み立てます。
残す情報と削る情報を分ける
図解に入れる情報は、少なければよいわけではありません。ただし、読み手が理解するために必要な情報と、詳しく知りたい人向けの補足情報は分けたほうがよいです。図解には全体像や判断に必要な要素を入れ、細かな条件や例外は本文や注釈に回します。
この判断で迷ったら、「その情報がなくても、図解の意味は伝わるか」と考えます。意味が伝わるなら、図解からは外してもよい可能性があります。逆に、その情報がないと誤解されるなら残します。削ることは情報を捨てることではなく、読み手が迷わない順番に置き直すことです。
並べる、分ける、つなぐ、比べる
情報整理では、難しい型を覚える前に、並べる、分ける、つなぐ、比べるの4つで考えると扱いやすくなります。時間の順番があるなら並べる。種類が違うなら分ける。関係があるならつなぐ。違いを見せたいなら比べる。多くのBtoB図解は、この組み合わせで作れます。
たとえば、導入の流れならプロセス図です。部門間の作業の受け渡しなら業務フローです。サービスの構成なら構造図です。プランの違いなら比較表です。課題と原因を整理したいなら課題整理図です。まず情報の性質を見てから図解タイプを選ぶと、見た目に引っ張られにくくなります。
図解は最後に形になる
よい図解は、最初からきれいな形で出てくるものではありません。読者を決め、結論を決め、残す情報を選び、関係を整理した結果として形になります。逆に言えば、ここまで整理できていれば、見た目の調整はかなり進めやすくなります。
図解を作る前の情報整理は、遠回りに見えるかもしれません。しかし、ここを飛ばすと、あとから何度も直すことになります。資料づくりの現場では、まず一枚のメモとして情報を分けてみるだけでも十分です。図解は、そのメモを読み手に伝わる形へ整える工程だと考えると、取り組みやすくなります。
情報整理で見落としやすいのは、読み手の前提
自社サービスや業界の前提をよく知っている人ほど、説明しなくても分かると思っている情報が多くなります。しかし、読み手は同じ前提を持っていないことがあります。専門用語、業務の流れ、部門間の関係、既存システムの制約など、社内では当たり前のことが読み手には見えていない場合があります。
図解を作る前には、読み手がどこまで知っているかを一度疑ってみるとよいです。初見でも分かる必要があるのか、すでに課題を理解している人に向けるのか、社内共有される前提なのか。前提の置き方によって、図解に入れる情報量は変わります。詳しすぎる図解も読みにくいですが、省略しすぎた図解も伝わりません。
下書きでは、きれいに作らない
情報整理の段階では、見た目を整えすぎないほうが進めやすいです。最初から完成形を作ろうとすると、配置や色に意識が向き、肝心の情報の関係を見落としやすくなります。まずは箇条書き、ラフな箱、矢印のメモで十分です。
下書きで確認したいのは、図解として成立するかではなく、情報のつながりが見えるかです。結論と根拠が離れていないか、比較したい項目が同じ軸で並んでいるか、流れが途中で飛んでいないか。ここを確認してから見た目を整えると、図解の修正が少なくなります。
情報整理は、制作依頼の精度も上げる
社内で作る場合でも、外部に依頼する場合でも、情報整理ができているとやり取りがスムーズになります。「いい感じに図解にしてほしい」だけでは、何を重視すればよいか伝わりません。誰に向けた図解か、何を理解してほしいか、どの情報を必ず残すかが分かっていると、仕上がりの方向がそろいやすくなります。
図解づくりは、見た目の作業に見えて、実際には情報設計の比重が大きい作業です。先に情報を整えておくほど、デザインの調整も判断しやすくなります。
整理した情報は、いったん本文の流れにも戻して確認します。図解だけを見ると分かるのに、本文では別の順番で説明していると、読者は途中で引っかかります。先に課題を見せるのか、構造を見せるのか、変化を見せるのか。本文と図解の入口をそろえるだけで、記事全体の読み心地はかなり変わります。